アキユウの独り言 blog

エルネア王国の初期国民の妄想、ネタバレ等多分に含まれますのでご注意ください。

13.誤解、そして旅立ち(ウィルマリア編)

どうしよう、どうしよう、どうしよう───……! この場から逃げ出したいと思うのに、ラザールの視線から逃れられない。 それどころか、自分の視線をラザールから逸らす事さえ出来なくて、思わずゴクリと唾を飲み込む。 「は、話……?」 「うん。そう。昨日の朝の…

12.そろそろ話をしようか。(ウィルマリア編)

────……やってしまった。 これはどう考えても、もう完全にアウトだ。 噴水通りを走り抜けながら、アタシは恥ずかしさと後悔で叫び出しそうになる口を必死に抑えた。 あの様子だと、ラザールには完璧にキスしたことがバレているはずだ。 どうしよう、と青くな…

11.キスと後悔(ウィルマリア編)

“順調”? と、聞かれれば、そうだと頷ける。 ───うん。 アタシとラザールは晴れて誤解も解きあって恋人同士として、二人の関係は世間一般から見て至って順調……なのだと、思う。 うん、思う。 思うの、だけど。 ……それでも、今のアタシには大きな大きなモヤモ…

10.諦めた恋(ウィルマリア編)

あれからアタシは────、 ……落ち込んで、落ち込んで、落ち込んで、 ──────そして、開き直った。 今のアタシにとって、「二人でどっか行かない?」は、もはやラザールに対する毎日の挨拶と化している始末。 何度断られようとも諦められないのだから、こうなっ…

9.恋愛対象外。(ウィルマリア編)

───毎日が……忙しなく過ぎていく。 父さんがガノスに旅立ってから、アタシの毎日はガラリと変わった。 ──まず、みんなに『殿下』ではなくて、『陛下』と呼ばれるようになった。 そして、国の祭事や行事には必ず出席して、祝いの言葉や激励の言葉を述べなけれ…

8.「王」になるということ(ウィルマリア編)

───どうしたらいいのか、分からなかった。 そんなあたしに出来ることは、一つだけ。 “ラザールと距離を置くこと” 今のあたしには、それしか思いつかない。 あの日からラザールを見掛けては、転移石を使って逃げての繰り返しで。 忘れたくても、そう簡単には…

7.あたしの願い(ウィルマリア編)

───……夢を見た。 それはあたしが、ずっと……ずっと、思い描いていたはずの──。 ……──王子様のようなレノックスに手を引かれ、「殿下」ではなく「ウィルマリア」と甘く囁かれる───、そんな夢。 ずっと思い描いていた事を、夢で見ることが出来た。それなのにあた…

6.旅立ちと変化と混乱と(ウィルマリア編)

───あの日から……あたしの中には複雑な気持ちが渦巻いていて。 ───『情念の炎』───。 噂に聞いて知ってはいたけれど、その“効果”を実際に目にした事がないから、噂を聞いた時は単に好奇心から来る興味しかなかった。 でも、もし、───もしも。 あたしがレノッ…

5.誕生日と揺れる心(ウィルマリア編)

麗らかな春の陽射しが午後の訪れを告げようとする中、王子達と簡単な自己紹介を終えたあたしは、王国の案内をしつつ────、 今、ヤーノ市場に…………来ているのだけれど。 「はい、ウィルマリア。君との出会いの記念に」 そう言ってオスキツ国王の末の王子である…

4.星の日と異国のお客様(ウィルマリア編)

───あれから数日が過ぎて、 あたしは見事に、…………レノックスを避けている。 二人が親密そうに話している姿を見たくないのが一番の理由だけれど、何より、これ以上レノックスに近付いて諦められなくなるのが怖いからだ。 友達と遊んで夕刻を過ぎた帰り道、ふ…

3.心にぽっかり空いた穴(ウィルマリア編)

あれからすぐに収穫祭の日がやって来た。 収穫祭は全ての食物に感謝しなきゃいけない日なのだけれど、あたし達子どもにとったら収穫祭の楽しみは別にあったりもする。 その楽しみのひとつは、収穫祭の日限定のウィアラさんの料理だ。父ちゃん達の会議によっ…

2.恋模様(ウィルマリア編)

今日は朝から、父ちゃんも母ちゃんも大忙し。 それもそのはず、今日は王国を挙げてのギート麦の収穫の日だ。 朝から王国のみんなが一斉に農場の各畑へと向かう。その時の長蛇の列は、道行く子ども達の通り道を塞いでしまう程。 でも実はあたし達子どもも、こ…

1.あたしの一日(ウィルマリア編)

あたしの父ちゃんは、ワイアット ・ガイダル。 ここ、エルネア王国の現国王で。 そして母ちゃんであるシャノン・ガイダルは、国王である父ちゃんを支えるべく、現在近衛騎士隊長、兼、評議会議長。 そんな二人から生まれてきたあたしは───、 周りから『殿下…

20.私の愛しい人(シャノン編)

仕事の合間を縫っては、麗らかな陽射しの中で娘のウィルマリアと戯れる。それが今の私の日課だ。 ウィルマリアが生まれて、より一層王家の居室は賑やかになった。 でも最近私がウィルマリアを抱き上げていると、決まって陛下が私の側でソワソワと順番待ちを…

19.誕生(シャノン編)

───春が過ぎて、夏を迎えて。 陛下と過ごす毎日が、ただ穏やかに過ぎて行く。 ここのところずっと、私より先に起きて陛下が朝ごはんを作ってくれる。 そんな愛しい人の背中を頬を緩めて見つめていると、陛下が不意に振り向き微笑んだ。 陛下の言葉に頷きなが…

18.新しい命(シャノン編)

─────翌朝。 眼が覚めると既に隣に陛下の姿は無くて、慌ててベッドから飛び起きた。 だけど同時にハッとして自分の服を見下ろす。 ……良かった、ちゃんと服を着てる。 そこまで思ってまたハッとする。 昨日のアレは夢!?と、少しだけ服の胸元を持ち上げてチ…

17.夫婦ケンカと本音(シャノン編)

私の手を引いて歩きだしてからは、何故か陛下はずっと無言で。 その理由をいくら考えても、私のこの格好が原因だとしか思えない。 ……そんなに、変だったのかな……。 いや、違う。 きっとあまりにも、王妃としての自覚が足りない格好だったからだ。 ……慣れない…

16.『好き』のその先は(シャノン編)

いつもは厳かな雰囲気の神殿も、結婚式ともなると人々のざわめきであちらこちらから話し声が聞こえてくる。 いよいよ、今から結婚式。 陛下と二人、静かに神殿の入り口に立つも、先程から緊張で何度も深呼吸を繰り返してしまう。 すると頭をふわりと優しく撫…

15.家族(シャノン編)

───あれから。 すぐにシズニ神殿へと陛下と二人で行って、結婚式の予約を入れた。 だけど目の前の出来事が私の願望による妄想じゃないかと信じられなくて、頬を抓りながら何度も何度も予約台帳を見返す。 そんな私を陛下は優しく見つめ、頬を抓る手をそっと…

14.「おかえり」(シャノン編)

陛下に送ってもらえるなんて普段の私なら嬉しくて堪らないはずなのに、今日はなんだかモヤモヤとしているせいか気持ちは複雑で。 陛下と両想いになれただけでも、奇跡みたいな事なのに。 ───それでも欲張りな自分は、“もっと”と望んでしまう。 片想いだった…

13.積み重なる幸せと不安と。(シャノン編)

「もうっランダル君!それ先に乗せちゃダメよ!」 「えっ、ゴメン……」 今朝は、ママ達の騒々しい声で目が覚めた。 ダイニングがやけに騒がしいなぁと覗いてみると、ママとパパが何やら楽しそうにキッチンで料理をしている。 普段パパはクールなのに、こうい…

12.初デート(シャノン編)

……あの後、クスクス笑い続ける陛下に抗議の目を向けてみる、も───。 小首を傾げながら「もしかして足りなかった?」と、目を細め妖艶な瞳の陛下が顎に手を添えてきたので、ソファーから慌てて立ち上がった。 恥ずかしさに逃げるように「失礼しますっ」と居室…

11.余裕(シャノン編)

あれから、どこに向かっているのかも聞き出せずに、陛下に手を引かれるまま歩き続ける。 聞きたい事は、山ほどある。 山ほどあるのに、何から聞けばいいのか分からなくて、その上今の状況さえもよく理解していない私は、結局黙って陛下について行くしかない…

10.片想い連鎖(シャノン編)

あれから逃げるように私は転移石でニヴの丘まで移動して、丁度誰も居なかった事にホッと胸をなでおろす。 だけど瞬時にさっきの陛下の顔が脳裏に浮かんできて、胸がギュッと苦しくなった。 陛下は長い事、恋人がいなかった。 それは単に、ママの言葉を信じて…

9.過去と真実(シャノン編)

陛下に挨拶をした後、それでもまだ陛下と話していたくて、でも、何から話せばいいのか分からなくて目を泳がせていると、陛下がふわりと笑って私の頭をポンと撫でた。 「成人、おめでとう。……すまない、つい癖で」 陛下が私の頭を撫でる手を、少し苦笑いしな…

8.成人式(シャノン編)

段々と、朝は寒くてベッドから出るのがキツイ季節になってきた。 それでも、もうすぐ一年の終わりが近付いていると思うと、ワクワクするような緊張で気が引き締まるような、なんともいえない変な気分だ。 今日も朝食を終えてから、私はこの間陛下にもらった…

7.友人以上恋人未満(シャノン編)

あの日、仮面越しに陛下と話して以来妙に気恥ずかしくて、陛下と顔を合わせては挨拶はするものの、逃げるようにその場を去ってしまう状態で。 でもそんな私の態度にも、陛下は怒る事なく笑顔で対応してくれるから、余計に自分の態度が恥ずかしくなる。 まぁ…

6.魔法と仮面と(シャノン編)

陛下に花束を貰ったあの日から数日が経ち、私と陛下の距離は少しずつだけれど近付いているような気がして、今日も私は朝早く太陽が昇る前から陛下の元へと駆けて行く。 「……失礼しまーす」 返事がないのをいい事に、私はこっそり陛下の寝室へと向かう。 ……ダ…

5.宝物(シャノン編)

あれから私は陛下の居室を飛び出して、走れるだけ遠くに走った。 気が付いたらもう既に夜遅くになっていて、探しに来てくれたママと一緒に帰った。 帰る道中木造橋を渡りながら、ママは黙って俯く私の手をそっと握り、何も聞かずにいてくれたけれど、心配さ…

4.大人と子供の境界線(シャノン編)

今日は朝からママが大張り切りでケーキを焼いていて。弟のクラウドやユフィもケーキはいまかいまかとキッチンで待ちわびている中、パパまでケーキ作りに駆り出されていた。 ───そう、今日は私の誕生日。 今日でやっと、ずっと待ち焦がれていた念願の5歳にな…